どんなスキルが必要?~ロバート・カッツモデル~
前期授業の評価に忙殺されて(言い訳ですが)久しぶりの独り言です。
学生の皆さんと話をしていると、「将来は、大学で学んだことを生かした職業に就きたい」と答える人が多いように思います。僕も大学では農業経済を勉強していましたので、県庁入庁後、10年弱は農政部(今は農林水産部といいます)への異動を希望していました。しかし、40年近い公務員生活で一度もその業務に就くことはできませんでした。さらにいえば、大学で学んだ経済学の知識は在職中ほとんど活用することはなかったように思います。
今、母校の同窓会に関わっているので年に数回母校に行って学生と交流する機会があります。ほとんどがマルクス経済学の先生しかいない当時と異なり、今は経営学科も出来て企業でも公務員でも役立つようなことが学べるようになっていると思います。
一方で、大学で学んだことがそのまま生かせる機会も少ないように思います。例えば、県が多いと思います。しかし、実態は、法律に関わる業務であるほど逐条解説や行政実例が整備され、それをしっかり読んでその通りにやれば大きなミスをすることはありません。
一人で仕事をする芸術家などを目指す人は別ですが、企業に就職しても起業しても”組織”には関わらざるを得ません。1950年代に米国の経営学者ロバート・L・カッツが提唱したマネジメント育成に係る「カッツ・モデル」というものがあります。カッツは、マネージャーに必要とされる能力を「テクニカル・スキル(業務遂行能力)」「ヒューマン・スキル(対人関係能力)」「コンセプチュアル・スキル」の3つに分類しました。
コンセプチュアル・スキルというのがわかりにくいと思いますが、「複雑なものごとの状況や構造などを、俯瞰的・体系的に捉えて概念化することで、本質を見極めて対応する能力」といった意味です(これでもわかりにくいかな?)。
将来、皆さんが、社長や役員になるときは、この能力が最も大切です。一方、テクニカル・スキルはあまり必要ないということになります。専門的な知識は部下がしっかり調べて対応してくれるわけです。
一方、ヒューマン・スキルはどの階層でも重要です。私も県庁で管理職をやっていたときは、人事部門に対して「頭が良い職員はいらない。コミュニケーション能力が高くて積極的な職員を配属してほしい」と言っていました。
もちろん自分が目指す目標に向かって専門的な知識を習得することは大切ですが、ぜひ「ヒューマン・スキル」を磨くように心掛けることが大切ではないでしょうか。